45歳で海外起業に挑戦 in 台湾 no:8
四平街ママとの商売学習の日々
「仕入れー台灣から日本へ」
四平街ママのところへ何度も通ううち次第に打ち解けて行き、彼女は服のことだけでなく仕入れについて、台北駅後ろ、市民大道の向こうに日本の女性服卸の店が集まる場所があり、そこで長年培った信用で後払いで日本から届いたばかりのスペシャルな服を誰よりも早く仕入れられるのだと教えてくれた。
「四平街ママの辛い過去」
しかしそれは後のことで、この商売を始めた頃は知り合いに連れられ日本へ行き、ひどい事にホテルを出て仕入れに向かう途中で急にみんないなくなり、右も左もわからぬ外国の街中に一人放り出された事もあったそうだ。
「パッキング」
私達もそうだが、台湾から日本へ仕入れに行くときは空の旅行カバンで日本に入国、逆に日本から台湾へは、仕入れた物を航空会社規定の20キロいっぱいまで詰め込む。詰めきれなかった物は馬喰町にある台湾人経営の運送会社にキロいくらで料金を払い運んで貰う事になるので、少しでも多く詰めようとする訳だ。
それでいつも大体2、3キロオーバーするのだが、結果は航空会社やカウンターの担当者によって違う。1キロでも超過は許されなかったり、多少は多めに見てもらえたりする。前者の場合はもちろん他の人の邪魔にならないところでカバンを開け荷物を減らし、再度カウンターに持って行き測り直す。抜いたものはこの事態を予想し準備しておいた折り畳みのバッグに入れ機内に持ち込めばいい。
「税関突破作戦!」
問題は台湾への再入国。入国審査を無事に通過しなければタックスを払わなくてはならない。超弱小経営の私達は極力それを避けたい。
そこで桃園飛行場に飛行機が着きパスポートコントロールは問題なく通過した後、私達は待ち合わせ場所を確認し、お互い他人の振りをし、別行動を取る。税関で捕まった場合、被害を少しでも減らそうという考えからだ。そしていつも私が先に荷物受け取りのターンテーブルに着くと、私は税関のゲートからは遠いところに陣取り、女房は近くで待機するのだが他人を装い目を合わせることは決してしない。
隠し窓のようなところから税関の職員が監視しているのを恐れるからだ。私は荷物を気にしながらもちらちらとゲートの方を観察する。大体ターンテーブルから近いゲートに列ができ、遠い方は誰も並んでいないことがよくある。
「作戦失敗」
ある日私はいつものようにターンテーブルから荷物をカートに載せると、捕まるのではないかという恐怖心を和らげるため、「私は乗り継ぎのバスに間に合わせようと急いでいる客」と自分に言い聞かせ、誰もいないゲートにカートを推して突進し、片手で掴んだ赤い日本のパスポートをかざしながら検査官の前を内心ドキドキしながら足早に通過し、出口に出て女房をまった。
なかなか出てこない女房をヤキモキしながら待っていた。一回出たらもう戻れないのでじっと待っていたら女房がやっとカートを推しながらこちらにやってくるのが見えた。
そして彼女は「検査官に捕まっって鞄を開けるように言われ、鞄いっぱいの服を見た検察官に売り物かどうか聞かれ、品物があまりにも多いので自分用だとは言えず、サンプルだと言ったところ、服の裏側にサンプルという大きなハンコを押されてしまった。」とうなだれていた。
実は私は前もって長い列ができているゲートは避け、空いているところに行くようにと注意していたのだが、変に気の小さい彼女は誰もいないところではなくわざわざ時間のかかる人の多い方へ行ってしまった。人に紛れられるとでも思ったのだろうが、どこかの隠し窓から目を光らせている検査官からすればバレバレだろう。
「厚切りジェイソン」
さて私が持ち込んだものは幸に無事だったが、女房の方の品物は、裏地とはいえサンプルのハンコを押された服はもちろん捨てる訳にはいかず、やはり店に並べていた。
するとびっくりしたことに、商品が良かったのだろうか、お客はサンプルスタンプが押されている服をも買っていくのだった。
日本人の不思議な行動に「Why Japanese people!?]と突っ込みをいれる厚切りジェイソンをまねて「Why taiwanese people!?]といってみよう。
私は接客できず、女房がやっているのでいくらで売ったかは分からない。ただ私は「サンプル」というスタンプがでかでかと押された服を日本人の客は果たして買ってくれるのだろうかと考えていた。