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45歳からの海外起業奮闘記 in 台湾

KAKIMAZERO 水底を!日が差せば輝くだろう、一粒一粒が。NO:6

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ある病院にて

「薬を食べる」

むかしむかし、ずっと若い頃に九州から上京し、東京の真っ黒い醤油スープのうどんが食べれるようになるまでに10年要した私は適応力が極めて弱いと言わざるを得ない。

 適応力"弱”男の私が異国の地台湾でてこずった物は少なくないが、それは何も食べ物に限ったことではない。なかなか理解できないもの、腑に落ちないもの、手に負えないものなどなどの色々な言葉にも遭遇して来た。

「吃藥」もその一つだ。

「吃」は「食べる」という動詞。

直訳すると「薬を食べる」になる。 

ちなみに中国語で「飲む」は「喝」という。

したがって、もちろん私だって中国語の授業で、「吃薬」というべきところを何度も「喝薬」と言い間違ったことがある。

偽教師の分際でほぼ20年、こそこそと日本語教師をして来た。その経験では、台湾の生徒も日本語の「薬を飲む」を「薬を食べる」と訳す間違いが多い。生徒がこの間違いを犯した時、

「そうだよね。そうなるよね。」

と密かにほくそ笑んだものだった。

 それにしてもである。なんで「薬を食べる」なのだろうか。

「たべる」とは「咀嚼する」「噛む」とほぼ同じではないだろうか。

カプセル入りの薬を噛む、あるいは咀嚼するなんて考えただけで、苦そうだ。やはり、「飲み込む」「呑み込む」「嚥下する」「水で飲み下す」などが適当なのではないか。

 台湾へ来て20年以上過ぎ、単発的、短期的な胃潰瘍、尿結石、前立腺肥大症(現在進行中)、ぎっくり腰、坐骨神経痛、髪染め薬による頭部の出来物(禿というほどではないにしろ、髪がすくなくなる後遺症あり)、

 それにほぼ20年来休まず、風邪と下痢に悩まされている。「あっちが痛い、こっちが痛い」で病院通いを続け、つまり、20年間風邪薬と下痢止めを食べ続けているという訳だ。

 女房は真逆でほとんど病院へ行きたがらない。ただ一つの欠点は "欲” が強すぎることだ。彼女の物欲、性欲、が夫婦関係を壊し、食欲が彼女を糖尿病にした。

 最近ある小さなことを切っ掛けに彼女の血糖値が急上昇し、店の長椅子に横たわり、風邪でもないのにガタガタ震えが止まらないことがあった。それでも私の言うことを聞かず、病院へ行こうとしない。隣近所の店の人や管理人なども来て説得したが聞き入れず、実の兄に電話を掛け説得してもらってやっと聞き入れた。

 隣駅にある仏教系の総合病院へタクシーで連れて行き、救急で見てもらったら、血糖値が600でかなり危険らしく、ベッドの横には映画やテレビの医療ドラマなどで目にする、心臓停止時にショックを与えて蘇生させる、アイロンのお化けのような物も用意されていた。

 入院して1週間がたったころだろうか、女房は退院したがり、医者が反対すると、「ここは金儲けばかりの悪徳病院だ。」などと言い出し、看護婦さんとも喧嘩し、同じ新店市内のキリスト教系の病院へ移るとわがままを言い、結局転院してしまった。

 金はあるのに(もちろん私には金はないと嘘を言い続けているが、、、)、入院費用をケチり、ここもそうそうに退院してしまった。そして、彼女お気に入りの 鼻腔専門クリニックで大病院と同じ薬を出してもらい、食事前の注射(!?)と薬を ”食べ” 続けている。

 これがいい教訓になったのか、彼女も病院へ行くようになったが、風邪の時は今でも私の薬を、つまみ食いしている。

 最近、事情があり別居をやめ、また女房と同居するべく引っ越した。私は今でも癌の再発を抑える薬を食べ続けている。この薬をもらうために、女房と同じ新店のキリスト教系の病院へ行くようになり、前立腺肥大症もここで見てもらうことにした。

 この泌尿器科の若くて優秀な医者に、ついでに風邪薬を頼んでみたら、これがよく効いた。ある日ふと、片方が透明のビニールで、もう片方の紙袋にかかれた効能書きを見ると、風邪の他に「関節炎」と書いてあった。

 女房は退院して薬を食べ続けてはいたが、血糖値は200を切ることはほとんどなく、足と手にむくみと痛みがあり、椅子から立ち上がる時も膝ががくがくする状態だった。

 これを見て私は泌尿器科の先生に貰った風邪薬の効能書きの「関節炎」を思い出し、女房にそのことを伝え、試してみるか聞くと、うん、と言った。

 これが劇的に効き、膝の痛みがなくなり、椅子から立ち上がるときもすっとたてるようになった。それからは、私を真似て、店のあるビルの隣の地下鉄のコンコースでウォーキングを始めるとますます元気になり、階段の上り下りも歳(現在62歳)相応にできるまでに回復した。

 ところが、引っ越しのごたごたのあと、女房の膝がまた悪化してしまい、手にも痛みがあり、最近は素直に病院へ行き、薬を貰ってきた。その中の一つが 「肌肉鬆弛劑」日本語だと「筋弛緩薬(グーグル翻訳)」だった。

 日本でだか、台湾でだかは忘れたが、以前にもぎっくり腰だか何だかでひどく痛んだことがあり、医者に筋弛緩薬を処方するかどうか聞かれ断ったことがあった。

 体の一部の痛みを消すのに、センサーが付いている訳でもない、只の飲み(食べ)薬が効くとは信じられなかったからだ。

 とは言え、私の信心なんてなんの根拠もなく、脆いものだ。やはり、引っ越しのごたごたの後、毎朝洗顔のため体を屈める度に腰が痛み、それがあのまともに歩けないほどの痛みを伴うぎっくり腰を連想させ、

「食べてみたら!彼女の筋弛緩薬、効くかもよ。」

などと私のなかでそそのかす奴がいて、まんまとそれにはまってしまったのだ。

 自分を信じ切れず、禁断の薬を食べてしまった私は今思う。

「筋弛緩薬」は確かによく効く。すぐ痛みがなくなるのだ。だが、その強力な効き目は患部だけではなく、異常のない体の全体の筋肉にも影響を及ぼしてしまうのだ。簡単に言えば、

「体調を崩してしまう」のだ。

 新聞などで「どこどこで、ある老人が体調を崩し、その後なくなった。」などというニュースを目にし、耳にしたことがあるが、

「特別な病気でもないのに、体調を崩しただけで、なんでなくなるのだろう?」というのが私の感想だった。

 この歳(4月9日で67歳)になって、これがどれだけ大変なものかようやく分かった。

教訓‼

「人の薬は食べてはならぬ。」