45歳で海外起業に挑戦 in 台湾 no:7
四平街ママとの商売学習の日々
私達が四平街ママと出会った頃には、彼女は台北で誰にも負けない仕入れルートを確立していたし、いい客も掴んでいるようだった。事実彼女の店を訪問した時、お医者さんの奥さんが友達を連れて買い物しているのを目撃したことがある。
「自分達にないものを持っている彼女に私は嫉妬ばかりしていた。」
ある日彼女と彼女の友達と私達夫婦4人で彼女の店の近くのレストランで食事をした。その時私自身は何を注文したか覚えていないが女房がベーコンのタップリ入ったホワイトソースのパスタを食べているのを見て、「よくそんなカロリーの高いものが食べられるね。太るから私は食べられない。」と彼女は呆れた様に言った。友達もうなずいていた。
ブティックのママらしくあるために彼女は食事の面でも自分をコントロールしているのだなと思った。
四平街はオフィス街でもあり大きくはないが朝市もあるので彼女は出勤前のOL客を掴むために朝7時過ぎには店を開け、夜7時には閉店してしまうそうだが、その行き帰りはタクシーを使うらしい。成功したブティックのママは優雅だなと思った。
貧乏性で東京で1度もタクシーを使ったことのない私は通勤でタクシーなど考えられず、これも羨ましいと思った。ただ台湾生活に慣れてくるとタクシーがそんなに贅沢なものではないことがわかってくる。私でもたまには利用することがあり、ずいぶん安いなと感じ、こんな稼ぎで生活ができるのかとさえ思った。
優雅そうに見えた彼女の生活振りだがしっかりしているところもあった。ある日私達がマクドナルドで遅めの朝ごはんを取り、食べきれなかったフライドポテトの袋を持って四平街ママを訪ねた。持っては来たものの時間が経つとしなしなになるのでゴミ箱に放り投げようかと考えていた。それを知った彼女は「捨てるんだったら置いていって。後で食べるから。」と言った。
使うところには使い、抑えるところは抑える。メリハリがちゃんとしてるんだなと感心した。
お茶目なところも彼女にはあった。
台湾ではビルの1階部分を歩行者が通れるようになっているところがあり、これを「 騎樓」という。ここは雨の日は濡れずに済み、誰でも歩ける歩道になり、犬を引いての散歩道でもあり、したがってたまにではあるがその地雷を踏んでしまう可能性のあるところでもある。またオートバイの駐輪場でもあり、小物、服、フルーツなどの小商の場所にもなり、偽物と本物の乞食と坊さんが物乞いする仕事場でもある、実に不思議な空間である。
そしてここを歩く時は、絶対に携帯をいじりながら歩いてはいけない。まるで個性豊かな台湾人さながら古いビルほどそれぞれが高さを競い合ってでもいるかのように歩道の高さが違いデコボコしているからだ。
四平街ママはある日ある「騎樓」を歩いていて小物売りが目に留まり、気に入ったものをいくつか買ってきたと言って見せてくれた。髪飾りなどの女性用の小物で流石に彼女が選んだだけあって店の雰囲気によくマッチしていた。
しかも彼女はそのうちの一つ100元で買ったものを50元乗っけて売ったというではないか?日本商品を扱うブティックで露端で買ったものを売っても大丈夫なのかと心配する私達に彼女は
「どこのものでもいいものは売れるのよ。」
と笑いながら言った。